2021年09月21日

文字起こしのコツ どうしても聴き取れないときはどう処理する?

ベテラン反訳者をもってしても、機器の不調やノイズのせいで録音音声がどうしても聴き取れない場合があります。そうした「難聴箇所」の取扱いにも幾つかの決まりがあります。今回は、そうした部分を聴き取るコツと処理の仕方を紹介します。

 

聴取の難しい部分を聴き取るコツとは 

 

 

目次

1. 文字起こしの「難聴箇所」の原因はいろいろ

「難聴箇所」が生じる原因は幾つもあります。大広間なのにICレコーダー1台きり、会議場の周囲が騒がしいなど、そもそも録音環境・条件に問題があったり、マイクのハウリング、機器の不調(接触不良)による音飛び、発言者がマイクから離れる、書類をマイクにかぶせてしまう、服の袖がマイクにこすれる、声が小さい、活舌がよくない、咳払い、椅子のきしみ……特に昨今は、発言中もマスクを着用している人が多く、声が籠もって不明瞭になったりで、「反訳者受難の時代」となっています。

録音音声を文字に起こすのが反訳者の仕事ですから、「きちんと録音されていない」部分はどうすることもできません。想像で勝手に補うことはできないので、やむを得ず大体の秒数(文字数)に合うくらいのブランク(空白)を空けることになります。依頼主によっては、ブランクの代わりに「聴取不能」と記載したり、●●●といった記号を入れるよう指定されたりすることもあります。また、大体の音は聞こえるけれども、それでは文脈にそぐわない、あるいは適切な漢字が分からないときは、聞こえたとおりにひらがなやカタカナで表記します。

 

「難聴箇所」の原因はいろいろ

 

 

2. 文字起こしの「難聴箇所」は、意外と無意味な音が多い

そんな穴だらけの原稿をベテランの反訳者が聴き直すと、苦労せずに、すらすらと埋めていってしまいます。同じ音を聴いているはずなのに、どうしてそんな離れ業ができるのでしょうか。

まず、経験の蓄積があります。ベテラン反訳者は、似たような会議を過去に幾つも経験しているため、話の流れから「用いられるであろう言葉」を絞ることができます。そして、頭の中で当たりをつけ、「多分こう言っているはず」という耳で聴きます。すると、不思議なことに(いつもとは限りませんが)予想と音声がぴったり一致するのです。

また、新人とベテランでは、ボキャブラリーの量が違います。新人には全く聴き取れない音でも、ベテラン反訳者の脳裏には候補のワードが幾つか浮かんできます。あとは何度か聴き直し、適切なものを選択するだけ。

さて、ここで筆者の経験から、ちょっぴりショッキングな事実をお伝えしましょう。何と「新人が聴き取れない音声の2~3割は意味のない言葉」なのです。

 

 

3. 文字起こし初心者であるがゆえに聞こえる「幻聴」

一言も聞き漏らすまいと腕まくりして臨む文字起こし初心者は、その気負いがかえって裏目に出ることがあります。何やら声は聞こえるのに、当てはまる言葉どころか、それらしい言葉も浮かばない。話の流れを読んでも、近い言葉すら思いつかない。諦めてブランクにした部分をベテラン反訳者に聞いてもらったら、笑って「それ言葉に詰まってるだけだよ」。

音声を聴くことに集中し過ぎると、単なる無機能語が「幻聴」のように、何か意味のあるワードに聞こえてしまったりします。リラックスして再度聞き直したら、「あのー」と言っているだけだった、ということがよくあるのです。何十分もかけたのに文字化する必要がなかったという、笑うに笑えないオチです。

そういうベテランの反訳者でさえ、何度聞いても分からず、翌日新鮮な気分で再度取り組んだら、削除で構わなかったという経験がしばしばあります。だからこそ、「文字起こしのコツ 反訳原稿の質を上げるために避けて通れない作業は?」の記事でも触れたように、「見直し」という作業が重要な意味を持つのです。

ほかにも、単なる口篭もり、言い淀み、「あの」「この」のような指示語、「でも」「ただ」のような接続語、「ちょっと」「いわゆる」といった口癖も多くあり、肩の力を抜いたほうが逆に聴き取れたりします。

 

初心者であるがゆえに聞こえる「幻聴」

 

 

4. 文字起こしのコツ 「聴取不能」を解く手がかりは文中にあり

多くの場合、聴き取れない音声の手がかりは、当該箇所の前後に潜んでいるもの。ちょっと遡って原稿を読み直す、あるいはもう少し先まで聞いてみると、同じ言葉が再登場することがあります。その辺で予測を立てて、改めて聞き直したら今度はすんなり聞こえたという経験は、ベテラン反訳者なら誰でも覚えがあるでしょう。離れたところにヒントがあり、最後の見直し作業で発見することもよくあります。

もし依頼主から預かった資料があれば、ざっとでよいので目を通しておくことも大事です。そこに、特殊な専門用語など、音声だけでは「聴取不能」になる語句が載っているかもしれません。あらかじめ文字を一度目にし、意識の片隅に残っていると、いざ音声を耳にしたときに無理なく聞き取れたり、「そんな言葉がたしか資料にあったな」と記憶がよみがえったりするものです。こうしたちょっとした工夫が、文字起こしの「聴取不能」を減らしていきます。

 

 

5.文字起こしのコツ 「聴取不能」を減らす秘訣は「心の余裕」

大事なのは、

 

  • 今話しているテーマは何か
  • そのテーマに対し、発言者は肯定的なのか否定的なのか

 

を、ちゃんと把握しながら文字に起こしいくこと。それによって、おのずと使われるであろう言葉の範囲が絞られ、聴き取り力がアップします。あまり一つの音にこだわらずに、全体を俯瞰する余裕も大事です。その余裕が、聴取不能を減らす秘訣なのかもしれません。

「よい作家はよい読者たれ」といいます。文章を作成するには、やはりそれだけの「言葉のストック」が必要です。今さら言うまでもありませんが、文字起こしに携わる者は、日々、様々なものを読むこと・聴くことでボキャブラリーを増やさなければなりません。ボキャブラリーの増加が自信を生み、心に余裕が生まれ、ひいては「聴取不能」を減らすことにつながっていくのです。

 

「聴取不能」を減らす秘訣は「心の余裕」

 

 

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