どうすればいい?単語登録 文字起こし熟練者にみる効率化のノウハウ
文字起こしのスピードアップに欠かせないテクニックの一つである単語登録。たくさんの語句を登録して使いこなすには自分なりの法則性を持つことが重要ですが、やり方が不明で困っている方のために、熟練者のノウハウの一端をご紹介します。
目次
1.「自分なりの法則性」とは
単語登録によってキーボード入力の簡略化を極めていくと、音声をリアルタイムに近い速さで入力できる可能性があることを、当サイトのコラム「文字起こしのコツを探る 音声ファイルをテキスト化するプロの手の動きを観察」の中で、実際の作業風景として動画でご覧いただきました。
そして、単語登録をするにあたっては「自分なりの法則性を持つ」のがよいことを、先行するコラム「単語登録を使いこなそう 文字起こしを効率化してスピードアップ」でお伝えいたしました。
これに対し、「法則性と言われても見当がつかない」「どんなルールを構築すれば上手くいくのか」といったお声を頂戴しています。
そこで、動画に登場した熟練者が駆使している単語登録の法則性を分析し、一例としてご紹介します。みなさまがご自身の法則性を確立なさるうえで参考にしていただければ望外の喜びです。
2.「短縮」と「変則」を使い分ける
この熟練者の入力方法はローマ字入力(ヘボン式ではなく、主に訓令式)です。
入力の様子を撮影した動画(コラム「文字起こしのコツを探る 音声ファイルをテキスト化するプロの手の動きを観察」所収)では55の単語登録が確認されましたが、その法則性を分析していくと、
- 入力する語句のローマ字表記から何文字かを間引いて短縮形にしたもの
- 入力する語句のローマ字表記とは結び付かない変則的なもの
に大別されます。
ただ、例外も結構、出てきます。このことから、最初から厳密な法則性を確立できていたわけではなく、試行錯誤の末、現状に辿り着いたものであることがうかがわれます。
3.「短縮」の例
ここで「短縮」と呼んでいるものは、ローマ字入力において、入力する語句の正式なローマ字表記から何文字かを間引くことを指します。今回の分析対象にした熟練者の場合、自立語で始まる語句にこのパターンが多く見られました。
動画で確認された事例を以下に記します(五十音順。*印は付属語や活用語尾を起点とする語句。以下同じ)。実際に間引かれたアルファベットは薄字にしてあります。間引かれるアルファベットは母音が比較的多いことがわかります。
3-1. 純然たる間引きによる短縮形
(入力語句) (ローマ字表記) (登録された「読み」の文字列)
あります arimasu am
医療 iryou ir
医療費 iryouhi irh
運営されている unneisareteiru uneireteiru
お金 okane ok
お話 ohanasi oh
思います omoimasu oiu
かもしれません* kamosiremasenn kmss
考え kangae ge
現在 genzai gz
国民 kokuminn kkm
こと koto kt
この kono kn
このような konoyouna kna
サービス sa–bisu sb
さらに sarani srn
しかし sikasi sks
仕組み sikumi skm
支払われる siharawareru sreru
少なくて sukunakute suukute
そして sosite sos
その sono sn
たくさん takusann tasa
であります* dearimasu ds
でありました* dearimasita dsa
では deha dh
当然 touzenn tz
なっています natteimasu naim
なります narimasu nam
場合 baai b
入る hairu hru
初め hajime hame
保険料 hokenryou hkr
人たち hitotati hitt
病院 byouinn bn
病気 byouki byo
負担 futann fnn
まず mazu mz
また mata mt
我が国 wagakuni wgk
わかりません wakarimasenn wn
私たち watasitati wt
3-2. 間引きに近い短縮形
(入力語句) (ローマ字表記) (登録された「読み」の文字列)
大きな ookina iin
全て subete sbb
とき toki tm
できた dekita cyta
必要 hituyou hh
もの mono mm
ます* masu mx
ように* youni uu
よりまして yorimasite ytt
4.「変則」の例
一方、分析対象にした動画には、単なる短縮形とは言えないパターンも見受けられました。登録された「読み」の文字列が、入力語句を単にローマ字表記したものとは掛け離れているものです。
4-1. 頻出する言い回しに特定のアルファベットを充てる
動画では「f」という子音のアルファベット入力で始まる文字列の変換に特徴が見られました。
(入力語句) (ローマ字表記) (登録された「読み」の文字列)
ってしまいます* ttesimaimasu fj
という* toiu f
ということ* toiukoto fk
というもの* toiumono fm
「f」=「という」とする原則を決めた後、いくつもの派生形が展開されていることがわかります。動画には出てきませんが、この熟練者は上記以外に次の語句についても「f」で入力が始まる単語登録をしていました。
(入力語句) (ローマ字表記) (登録された「読み」の文字列)
というのが* toiunoga fga
というのは* toiunoha fha
というのを* toiunowo fwo
これらは自立語では始まっていない語句である点が共通しています。
付属語を起点にする単語登録に、この熟練者は独自の法則性を持っていることがうかがわれます。もう少し詳しく見ていきます。
4-2. 特定の助詞に続く言い回しをくくる
この熟練者は、「に」や「を」といった格助詞に続く言い回しの単語登録についても、単なる短縮形を超えた独自の法則性を編み出していました。
以下にその一端を紹介します。「に」に続く言い回しの入力を簡略化するために、「ni」または「i」で始まる多彩な派生形が展開されています。こうして格助詞などでくくっておくと、思い出すのも容易になりそうですね。
(入力語句) (ローマ字表記) (登録された「読み」の文字列)
において* nioite niot
におきまして* niokimasite niott
について* nituite it
につきまして* nitukimasite itt
に関して* nikansite nikt
に関しまして* nikansimasite niktt
に関する* nikansuru niks
に対して* nitaisite nit
に対しまして* nitaisimasite nitt
に対する* nitaisuru nits
に当たって* niatatte niat
に当たりまして* niatarimasite niatt
に伴い* nitomonai nim
に伴いまして* nitomonaimasite nimmm
に伴って* nitomonatte nimm
に伴う* nitomonau nimu
そして、これらの多くは、実は短縮形にもなっていました。純然たる短縮形としても成立するものを以下に再掲します。(間引かれたアルファベットを薄字にしています)
(入力語句) (ローマ字表記) (登録された「読み」の文字列)
において* nioite niot
について* nituite it
につきまして* nitukimasite itt
に関して* nikansite nikt
に関する* nikansuru niks
に対して* nitaisite nit
に対しまして* nitaisimasite itt
に対する* nitaisuru nits
に当たって* niatatte niat
に当たりまして* niatarimasite niatt
に伴い* nitomonai nim
に伴う* nitomonau nimu
5. 法則性の立て方は自由自在
以上はあくまで法則性の一例です。
単語登録を使いこなすことは、キー入力の回数をいかに減らせるかを究めることでもあります。使い手はご自身だけですから、ルールはいかようにも決められます。ぜひ、ご自身なりの法則性を確立し、入力を効率化につなげてください。