単語登録を使いこなそう 文字起こしを効率化してスピードアップ
文字起こしの専門業者は、効率よく入力してスピードアップするために「単語登録」を駆使しています。この機能の存在を知ってはいるものの、まだ使いこなせていない方々のために、熟練者の一人にきいた勘どころを、二つばかりご紹介します。文字起こしのコツと効率的なやり方も合わせてご覧ください。
目次
1. 単語登録とは
単語登録は、キーボードでの文字入力を効率化する基本的なテクニックの一つです。インターネットの検索サイトで「単語登録 方法」などと検索すると、やり方を解説してくれているサイトを見つけることができます。
通常、パソコンなどに搭載されているワープロソフトでの日本語入力は、語句の「読み」をまず入力した後、意中の変換候補が示されるまで変換キーを叩き、最後にEnterキーなどで確定させなければなりません。欧米語など、表音文字だけで構成される言語に比べると、非常に面倒な手順を踏んでいることがわかります。
さらに、日本語には同音異義語がたくさんあることも、ワープロソフトでの文字起こしをするうえで難点になります。例えば、「こうしょう」と発音する言葉の場合、オンライン辞典サイト「wiktionary」の日本語版を参照したところ、約50もの同音異義語が掲載されていました。ワープロソフトの場合、これら以外に人名などの固有名詞も含む厖大な数の変換候補が提示されてくることになります。
こうなると、意中の変換候補にたどり着くために、変換キーを叩きまくったり押しっ放しにしたりする必要が出てきそうです。叩きすぎたり押しっぱなしにしすぎたりして、意中の変換候補を過ぎてしまったりすると、矢印キーなどで戻らなければならないという手間も生じます。
単語登録を活用すれば、そのような非効率を避けることができます。作成中の文書に頻出する単語はもとより、ビジネス文書などで用いる「いつもお世話になっております」のような定型的な語句の連なりも、一定文字数以内であれば登録可能です。
登録する際は、「読み」を実際の語句の通りに設定する必要はなく、短縮したり、自身だけが理解できる文字列にしたりもできるので、入力時の変換および確定に要する手数を確実に減らすことができるでしょう。
2. 勘どころは「読み」の設定
今回、話をきいた文字起こしの熟練者によると、さしあたり
- 他の単語とバッティングしないこと
- 自分なりの法則性を持つこと
を、単語登録の初歩的な原則として心得ておくとよいそうです。
以下、「2-1」~「2-3」の記述は、この熟練者による説明になります。
事例も挙げていますが、なにぶん専門業者の個人的なテクニックであり、どなたにも参考になるものとは限らないことを御承知おきください。
なお、当サイトの別のコラム「どうすればいい?単語登録 文字起こし熟練者にみる効率化のノウハウ」では別の熟練者のテクニックもご紹介しておりますので、合わせてお読みください。
2-1. 他の単語とバッティングしないこと
他の単語とバッティングしない(かぶってしまわない)ようにするには、「読み」の設定に気をつける必要があります。
<議事録作成でよく使う語句での事例>
- 「議案第1号」を単語登録するのに、「読み」を「ぎだい」と短縮形で設定したら、「議題」と混同してしまうおそれがある
- 会議と開議の場合は、会議はそのまま「かいぎ」で、「開議」は「ひらぎ」として「読み」を設定して単語登録すれば、混同することはなくなる
もう一つ、注意をしなければいけないのは、一文字だけの「読み」の設定で、幾つもの言葉を単語登録してしまうこと。これは絶対に避けなければなりません。
<熟練者自身が漫然と犯していた悪い事例>
- 「読み」を「け」に設定して、「結構」「憲法」「けれども」と3語も登録してしまっていた
ワープロソフトには学習能力が備わっており、直近に変換を確定した単語の表示が優先順位1位になるでしょうから、頻繁に同じ単語が出て来る場合は、ミスを犯すおそれは大きくないかも知れません。とはいえ、「結構」「憲法」「けれども」などは、優先順位に関係なく出てくる単語ですから、単語登録の際には、同じ「読み」を漫然と設定してしまわないよう心掛けたいものです。
2-2. 自分なりの法則性を持つこと
「法則性」といっても、使い手は自身だけですから、いかようにもルールを決めることができます。
<「ん」で始まる「読み」を設定した事例>
- んす → ございます。
- んすけ → ございますけれども、
- んて → 考えて
- んる → 考える
- んた → 考えた
<拗音(しゃ・しゅ・しょ)の小書き(ゃ・ゅ・ょ)を「読み」の設定に生かした事例>
- けゅ → 研修
- けゅか → 研修会
- じゅじ → 充実
- さょ → 最初
- ざょ → 材料
- てょ → 提供
「読み」に3文字を使えば、漢字仮名交じり文の入力を、さらに効率化できます。入力に要する時間を短縮できるだけでなく、誤変換を排除できるので正確性が増すことにもなります。10文字を超える語句でも一気に入力できるので便利ですよ。
<「読み」を3文字で設定した事例>
- あざす → ありがとうございます。
- あざた → ありがとうございました。
- どざた → どうもありがとうございました。
<「長」が語末につく単語の事例>
- しちう → 市長
- ちちう → 町長
- そちう → 村長
- しゃちう → 社長
- かちう → 会長
皆さんもぜひ、独自の法則性を打ち立てて、能率と正確性を担保してくださいね。
2-3. 失敗談
せっかく苦労して独自の法則性を打ち立てても、瞬時に思い出せるものとなっていなければ、元も子もありません。
これは、まだ文字起こしの初心者だったころの失敗談です。
設定した「読み」と、登録「語句」を照合できるよう、「単語登録一覧」などというノートをつくり、悦に入っていたのですが、これが大間違い。「どうもありがとうございました」など、自分が登録しておいた語句に対して、どんな「読み」を設定したのかを思い出せなくなり、いちいちノートをめくって調べるはめになってしまったことがありました……。これでは入力の効率がかえって低下してしまうので、本末転倒です。
そうなるよりは、文字起こしの過程で「これは」と思った語句が出てきた都度、「読み」を設定して単語登録をしていかれてはどうでしょう。その方が、より印象に残るでしょうし、度忘れも少なくなることを、経験則として共有したいと思います。
3. 文明の利器としてのワープロ テクノロジーとしてのAI音声認識
ワープロが登場する前、音声やその記録を文字化するには、筆記用具を用いて「手書き」するしかありませんでした。担当者は、聞き取る力に加え、字の上手い下手も問われ、読み手に配慮して丁寧に、しかも迅速に清書できなければならず、たいそうな職人技だったといえます。
それが、日本語ワープロという「文明の利器」によって、キーボードをぱちぱちと打つだけの作業になり、活字同様に整然と印字もできるようになって、担当者の負荷は大幅に減りました。とはいえ、文字起こしは依然として、一般の方々には苦役ともいうべきものです。
一方、「単語登録」を駆使することによってワープロの可能性を極限まで引き出し、記録文化の一翼を担っている職業人が、文字起こしの専門業者になります。
新たに登場したAI音声認識という「テクノロジー」は、文字起こしの第一段階である文字列の生成を自動化します。人の手が必要となるのは、自動生成された文字列を修正する段階になってからなので、作業量を軽減できる可能性があります。
文明の利器であるワープロと、最新テクノロジーであるAI音声認識。読みやすさ、作成にかかるコスト、出来上がりまでの納期を単純に比較して優劣を論じてしまいがちですが、日本語の文字起こしにおいて両者をどう融合させ得るのかは興味深いテーマです。これについては改めて考察していきたいと思います。
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